家庭での看病

家庭におけるお子様の
看病のポイント

「小児の発熱」について

  • 熱が出たらどうするの?

    • 熱が出たら薄着にしてあげて下さい。熱を外に逃がすだけでも小さい子の体温は下降します。
    • 寒がっている時は、熱が上昇している時です。軽く着せて、少し暖めて下さい。
    • 熱が上がりきったら、顔が赤くなり、手足も熱くなります。その時は思い切って薄着にして下さい。
    • 子供は脱水になりやすいので、たくさん着せて汗をかかせたりするのは危険です。止めて下さい。
    • 氷嚢などで頭部や四肢の付け根(大腿、脇)を冷やして下さい。本人がいやがったら薄着だけで十分です。
    • 水分は頻回にあげて下さい。下痢がなければ、冷たい飲み物でもかまいません。
  • 熱はなぜ出るの?
    高熱が続いても大丈夫?

    • 熱は一般にビールスや細菌が体の中に入って、体と戦っているために出る、いわば2次的な反応です。
    • 熱が続いたからといって、そのために脳がおかしくなることはまれです。
    • むしろ、熱の原因がどこからきているのかを探ることが重要です。
    • 病気の重症度は、熱よりも、熱以外の症状がどの程度あるのかによって決まります。
    • 解熱イコール病気が治ることではありません。解熱した後も医師が必要と認めた期間は薬を続けて下さい。
  • 解熱剤(げねつざい)は
    どのように使うの?

    • 通常38.5℃以上の熱が続き、かつ具合が悪い時は、解熱剤を使って熱を下げてあげましょう。
    • 寝ている子や、元気も食欲もある子なら、解熱剤を使わなくてもいいでしょう。
    • 一度使ったら、次に使用するまで最低6時間は間隔をあけて下さい。
    • 剤型には、坐薬、散剤、水剤、錠剤があります。
    • 保存可能期間:水薬は冷蔵庫で2週間、坐薬は冷蔵庫(4℃)で1年間、散剤は室温乾燥保存で約半年間(湿気ていたら使用しない)を目安にして下さい。
    • けいれん止めを併用する場合は、けいれん止めを先に挿肛、15分あけて解熱剤を使用しましょう。
    • 生後4ヶ月未満の赤ちゃんは解熱剤を使用することで低体温になりやすく、かえって状態が悪くなることがありますので、小さい赤ちゃんへの解熱剤の使用は避けて下さい。
    • 体重の異なる兄弟間で解熱剤(座薬も含む)を融通しあわないで下さい。

「単純性 熱性けいれん」について

  • (単純性)熱性けいれんの
    特徴

    【年令】
    生後6カ月〜4歳に多く見られます。
    【頻度】
    日本人100人のうち平均7人が熱性けいれんを経験します。男子に多く見られます。
    【体温】
    通常38.5℃以上(けいれんの後で上昇することもあります)で発症します。
    【症状】
    意識が消失し、白眼をむき(眼球上転)、全身を硬直させ、青紫色(チアノーゼ)になります。
    次いで手足がピクピクと周期的にけいれん収縮します。通常2〜3分でおさまり、10分をこえません。
    意識があり、小刻みに震えているだけのものは、高熱による「震え」で、「けいれん」ではありません。
    【予後】
    一般的に運動、知能ともに心配はいりません。けいれんを繰り返す子、けいれん時間の長かった子、微熱でけいれんを起こす子は、てんかんとの鑑別も必要のため、脳波検査が必要です。
    【再発】
    1度けいれんをおこした子は同程度の発熱で再びおこし易いですが、5歳を越すと減少します。
    【遺伝】
    熱性けいれんの家族集積性はありますが、心配は無用です。
    【予防接種】
    けいれん後の予防接種は、外来にてご相談下さい。

    年令・体温・症状やけいれんの長さなど、1つでも上記内容と合致しない場合、(単純性)熱性けいれんとはいえません。症状が消失して正常に復していても、検査を勧めることがありますので、医師に御相談下さい。

  • 熱性けいれん時の
    家庭での処置

    けいれんが起きたら

    • 顔を横に向けて寝かし、衣服をゆるめ、けいれん開始の時刻を見ましょう。
    • けいれんの仕方(顔色、持続時間、左右対称のけいれんか、意識はあるか、黒眼の向きなど)に注意して下さい。
    • 無理に口の中に物をかませるのは、むしろ危険です。舌を噛み切ることは稀です。
    • 5分たってもけいれんが止まらなかったら、当院に連絡をいただくか、救急車を呼びましょう。

    けいれん後には

    • けいれん後のお子さんの様子をよく観察しましょう。
    • 手足は左右とも動いているか、意識は正常にもどったか、いつも通りに話せるか、などに注意しましょう。
    • けいれん後は嘔吐しやすく、意識が完全に戻っていないこともあるので、食事はしばらく摂らないほうがいいでしょう。けいれん当日の入浴も避けて下さい。

    頓服薬・けいれん止めの坐薬(ダイアップ®座薬)

    • けいれんをおこしやすい子は、病院でけいれん止めの頓服薬(坐薬/内服)を出します。
    • 高熱が続く際は、8時間あければ2度目の頓服薬を使用することができます(最大2回まで)。
    • けいれん止めの副症状として、深睡眠、ふらつき、よだれ、舌のもつれなどが一時的に出現することがあります。
    • 以上の症状が残っている内は、薬の効果が残っていますので、次のけいれん止めの投与は延期して、様子を見て下さい。
    • 高熱(>38.5℃)があれば(よくけいれんする子は38℃で)解熱剤を併用して下さい。(けいれん止めの座薬と熱冷ましの座薬は最低15分ずらしてご使用下さい)
    • くりかえしけいれんする際は、1回のけいれん時間が短くても来院して下さい。

嘔吐・下痢・脱水時の
諸注意

  • 脱水の症状

    子供は大人より水分の出入りが多いため、嘔吐・下痢・水分摂取不良により簡単に脱水を来たしやすいのです。

    1. 元気がない
    2. トロンとして寝てばかりいる
    3. 足元がふらつく
    4. 尿の回数が少ない
    5. 眼が落ち窪む
    6. 熱があるのに汗をかかない
    7. 甘い口臭がする
    8. けいれん

    以上の症状がいくつか揃ったら点滴が必要です。早めにクリニックにおいで下さい。

  • 嘔吐・下痢時の治療と管理

    1. 食事療法
      下記
    2. 輸液療法
      点滴
    3. 薬物療法
      整腸剤、吐き気止め 細菌性腸炎の疑いでは、抗生剤
    4. 脱水の予防
      無理に汗をかかせない、発熱時は薄着に、入浴は禁止
    5. 手洗い
      水道水・通常石鹸による長めの手洗い
    6. 消毒
      衣服:80℃超の熱湯10分浸すまたは熱風乾燥、床・ノブ:次亜塩素酸で消毒
  • 食事療法の基本的な考え方

    • 脱水で失われるものは、水分・塩分・糖分です。3つ同時補給を心がけましょう。
    • 食事が摂れない時は、塩分・糖分の含まれない水・お茶・麦茶はお薦めできません。
    • 栄養価(カロリー)の高いものは、胃腸の負担を招くので、与えない方がいいでしょう。
    • 食事・ミルクともに(特に嘔吐がある時は)1回量を少なく、頻繁にあげましょう。
    • 母乳はそのままでもいいですが、ミルクは軽度希釈(70〜80%の濃さ)してあげましょう。
    • 症状が軽快したら食事は徐々に元に戻しましょう。治り際を大切にしないと慢性化します。
    • 離乳食期の方はミルクの割合が高いと下痢は悪化します。離乳食には炭水化物を選択下さい。
    • 2週間以上下痢が続く場合、乳糖フリーのミルク(ノンラクト®に変更してみましょう。
  • 下痢の時に食べてもいいもの

    1. 【冷たくない水分】
      イオン飲料、OS-1®、味噌汁、擦りおろしリンゴ、薄い蜂蜜湯、野菜スープ
    2. 【炭水化物】
      おかゆ(塩味を十分に)、うどん、軟らかいご飯、食パン、じゃがいも
    3. 【その他】
      リンゴ、バナナ、よく煮た野菜、ウエハース、塩せんべい、豆腐、ささみ(少)、白身魚(少)
  • 下痢の時に望ましくないもの

    1. 【冷たいもの】
      氷、冷蔵庫の中の飲みもの、アイス
    2. 【脂肪分の多いもの】
      チョコ、バター、ドーナツ、ナッツ、チップス、牛乳、クリーム、天ぷら、フライ、脂身
    3. 【繊維質の多いもの】
      生野菜、フルーツ(蜜柑、苺、ブドウ、パイナップル)、さつまいも、たけのこ、海藻類
    4. 【乳製品】
      母乳、ミルク、牛乳、ヨーグルト、プリン、クリーム
    5. 【極端に甘い物】
      ジュース、コーラ、クリーム、餡(あん)、菓子類

    下痢がなく、嘔吐のみの際は、甘みが強いものでも構いません。1と2と酸味の強いフルーツは避けて下さい。

鼻出血時の諸注意

  • 鼻水に少量の鼻血が混じる時

    あまり心配はいりません。特に処置はいりません。

  • 純粋な鼻血が出た時

    1. 鼻血が出る側を確認します。
    2. 出る側が片方なら、出る側の鼻にティッシュまたは綿球で栓をします。
    3. 寝かさず、ソファーなどに座らせ、前かがみにさせます。
      (寝かすことで鼻血が胃の方にまわり、後で吐血やタール便(黒い便)を生じます。
      また、出血部が心臓より高いところにあるほうが出血量は減少します)
    4. 出血側の鼻翼(小鼻)の上部を(5分間)くらい押さえます。(決して途中で緩めてはいけません)
    5. 5分間後に止血しているか確認します。
    6. 出血側の小鼻の上部を冷やしてもらうのもいいです。
      鼻血は一度切れた所が、くしゃみ・咳・鼻かみ・指でいじることで、再び出血しやすい状態になっています。
      爪をカットし丸めておくこと、鼻いじりを止めさせること、強い鼻かみにも気をつけて下さい。

頭部打撲時の諸注意

  • 頭部打撲で起きること

    脳震盪、頭蓋骨骨折、頭血腫、頭蓋内出血

    問題は頭蓋骨骨折ではなく、頭蓋内出血があるかどうかです!

  • 急性症状

    ポイントは受傷後1時間に下記の症状があるかです。心配な折は救急に受診をお勧めします。
    6時間を超えて下記の症状がなければ、もう大丈夫でしょう。

    【嘔気・嘔吐】
    頭部打撲後、大泣きをして2〜3回吐くことはありますが、止まらない嘔吐は要注意。
    【頭痛・顔色】
    いつまでもトローンとした意識で、顔色が優れないのは危ない。
    【意識混濁・昏睡・けいれん】
     
    【高熱】
    頭部打撲の刺激で、高熱が出ることもあります。
    【大泉門膨隆】
    乳児では、頭蓋内圧が↑すると大泉門が膨らんできます。(泣いていると不明)
  • 乳児期の特別な病態(頭部打撲後の慢性進行性症状)

    乳児の頭蓋骨は1つになっていないため、頭蓋内圧が上昇してくると、骨が内側からの圧迫で開大し、大泉門が広がる・膨らむようになります。このような病態が急性期ではなく、受傷後数ヶ月間ゆっくり進行することがあります。それと同時に精神運動発達も止まります。1歳を超えた子では、頭蓋骨が癒合していますので、このような慢性の経過をとることはありません。

薬の飲ませ方

  • 食前・食後どちらが良いか

    小さい子は原則として食前(ミルク前)にあげるのがいいでしょう。食後にあげようとすると、吐く・飲めないなどの症状が現れやすいからです。無理して飲ませても、せっかく飲んだ薬とその前に食べた食事やミルクまで全量嘔吐することがあります。「食前薬」は食事を摂ったら薬が飲めないのではなく、「食後薬」は食事が摂れない時には飲めない訳でもありません。「食前薬」は、「1日3回飲んで下さい。食前の方が無難ですよ!」というくらいのメッセージなのです。

  • 粉とシロップどちらが飲ませやすいか

    基本どちらでも構いませんが、いくつかの特徴があります。シロップは粉と違って1回毎に小分けしていませんので、持ち運ぶには不便です。その上冷所保存を基本とし、処方されてから2週間しか保存できないので、どちらでもいい方は粉の方が扱いやすいでしょう。ただし、すべての粉が水に溶けやすい訳ではありませんし、たくさんの水に解くぐらいなら、最初からシロップの方がいいかと思います。
    離乳食開始前の完全母乳の方は、シロップの受け入れは極めて悪いので、粉に数滴の水を落とし、練って頬の内側に塗ってあげるのがいいでしょう。人工乳の方は、哺乳瓶の乳首のみを(瓶をつけずに)くわえさせ、シロップを乳首に少量ずつ落としてあげると、空腹時なら飲んでくれると思います。
    粉とシロップ、どちらが効きますか?という質問を時々いただきますが、薬効は同じなので、「飲める薬の方が効きます」と答えています。大切なことは、お子様に処方された薬を、お母様がまず一通り味見をしてみることです。

  • 粉薬は何に混ぜたらいいか

    粉薬が溶けにくいからといって、熱湯で溶くのはやめて下さい。どの薬も耐熱性を保障したものはありません。また、ミルクに混ぜると、主食であるミルクそのものを飲まなくなってしまう危険もあります。赤ちゃんの薬の飲ませ方は前の項目に書きましたが、2〜3歳児も薬だからといってがんばって飲んではくれません。そこで何に混ぜるのか?になります。シロップが存在する薬は、シロップ好きの子には○です。抗生剤や下痢止めなど粉薬しかないものは、溶けの悪い粉もあり、水で溶くより、ねり物に混ぜることをお勧めします。一部抗生剤は、ヨーグルト・ジュースなどの酸に混ぜると苦さが倍増しますので注意が必要です。
    以下の食材の中から、お母様が受け入れやすいものを選んで試みて下さい。

    薬と混ぜる(薬を包む)お薦めのねり物系食材
    チョコクリーム、水飴、ゼリー、プリン、ムース、完熟バナナ、アイスクリーム、コンデンスミルク
    ピーナッツクリーム、シュークリーム、あんこ、蜂蜜(乳児は禁忌)

  • 座薬の入れ方

    座薬は冷所(4℃)に保存(1年程度は使用可能)して、使用前に室温に戻してからご使用下さい。使用時には、肛門部または座薬自身にオイルまたはゼリーを塗って、滑りやすくして肛門深くに挿入します。
    肛門括約筋を超えて挿入するためには、爪が見えなくなるまで入れる必要があります。痛かったり、冷たすぎると、抵抗力が増強し、ますます挿入困難になります。挿入後、十数秒肛門に指を添えておく方がいいでしょう。形のまま出てきてしまった場合は、再度押し込んでもいいですが、半分以上溶けた状態で出てきた場合は、効いていることも多いので、次なる座薬の再投入を直ぐにしないで様子を見て下さい。
    座薬=解熱剤ではありません。便秘薬・けいれん止め・吐き気止めなどの座薬もあり、量や種類を間違って使用すると危険ですので、兄弟間での使い回しは、原則しないで下さい。座薬だからといって座って飲んだり(笑)、プラスチックケースのまま肛門挿入したりしないで下さい(痛)。

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