子供の病気

症状が進行する前に、
早めに対策と予防を。

発疹の見られる感染症

  • 水痘(水ぼうそう)

    水痘は1年中ぱらぱらと流行しています。最初に1つ2つできてきた時には虫さされと見まちがうような発疹で、その後からだ中にパラパラと広がります。中央に水疱が出現したら診断は確実です(手足口病も水疱を伴いますが、主に手足にできます)。熱が出ないこともあります。だんだん痂皮(かさぶた)化し、1週間くらいで終結します。ヘルペスウイルス属なので、抗ヘルペス薬(ゾビラックス®など)が有効ですが、ワクチンもありますので(3歳未満無料)ご利用いただくことが一番です。家族内感染を防ぐ方法(2週間の潜伏期中に抗ヘルペス薬を予防投薬する)もありますので、どーしてもうつされたくない方はご相談下さい。学校伝染病指定なので、罹ったら1週間程度公欠になります。

  • 手足口病(てあしくち病)(新型と古典型)

    夏風邪(コクサッキー)ウイルスにより発症します。37〜38℃の微熱と文字通り手掌と足底と口腔内に小水疱疹ができ、口内炎は時に痛みで食べられなくなることもあります。足は足底以外に膝頭やお尻にも発疹ができます。古典型の手足口病は、基本的には軽い病気ですので、様子をみていてけっこうです。咳も下痢も高熱もあまりありませんが、無菌性髄膜炎を合併しますと高熱・嘔吐・強い頭痛を伴います。学校伝染病指定にはなっておらず、症状が軽ければ登校可能です。ワクチンも特効薬もありません。ウイルスの型が1種類に特定されないので、一生に何回か罹る可能性があります。古典型手足口病はコクサッキーA16(Cox.A16)とエンテロウイルス71型(EV.71)によっておきますが、これらとは別に、近年Cox.A10またはCox.A6による新型手足口病が流行しています。Cox.A10/A6ウイルスはもともとヘルパンギーナをひきおこすウイルスで、手足口病のウイルスと親戚であるために、遺伝子が交雑して新種の病気が生まれたと考えられます。これらの症状は、高熱(39℃×2日程度)とヘルパンギーナを生じ、その代わりに口腔内症状に乏しく、手掌足底に限らず四肢の広い範囲、場合によっては体幹に及ぶ大きな水疱を持つ発疹が多発し、水痘と見誤るケースもあるほどです。また感染1ヶ月後より、半分近い方に爪の変形・脱落を生じる(その後改善)ことも特筆すべき症状です。まだあまり知られていない疾患なので、原因不明の爪脱落として片付けられている場合もあります。

  • 伝染性紅斑(りんご病)

    りんご病は頰(ほっぺ)が真っ赤になることからその名がついていますが、頰が赤くなった2〜3日後に腕脚にレース様の発疹をきたします。人によっては、融合性の紅斑を示すこともあります。咳・鼻や嘔吐・下痢などは生じません。熱は発疹がでる1週間前に出ることがあります。発疹が出たらそこから先は感染力がありませんので、診断がついた頃にはすでにうつりません(うつし終わったかも?)。妊婦さんがこの病気にかかると胎児が重症貧血となって、ときに流産に至ることがあります。もし、妊婦さんがこの病気になったら、妊婦健診を受けましょう。小児でも、まれに強い貧血が現れることがありますが、大抵はそのまま軽快します。りんご病の発疹は光線を浴びると悪化するので、紅斑出現後2週間くらいは、強い日差しの中に長く居ない方がいいでしょう。ワクチンはありません。診断時に感染力がないため、学校伝染病からもはずされています。一度罹ると、二度と罹らないと言われています。

  • 突発性発疹症

    乳児が最初に罹る発熱性疾患として知られています。実際、生後6ヶ月〜1歳くらいの間にほとんどの児が罹ります。「ヒトヘルペス6型」というウイルスが原因である事が、最近(20年ほど前に)判明したばかりです。この疾患は、39℃の熱が3日くらい持続した後、急に解熱し、その半日後に、胸〜お腹に大きめの紅斑が出現する病気で、一部で下痢を伴います。高い熱の割に比較的機嫌がいいのも特徴です(解熱直後は一転不機嫌になる子が増えます)。重症化は少なく、季節性もなく、大流行する事もありません。ワクチンは有りません。「ヒトヘルペス7型」という親戚のウイルスも類似の症状を示す事があり、007では有りませんが「2度罹ったよ」という事態もありえます。

  • とびひ(伝染性膿痂疹)

    とびひは黄色ブドウ球菌という菌が皮膚に増えて発症する病気です。黄色ブドウ球菌は鼻腔や臍部などに常在する菌ですが、これが傷のある皮膚で増殖すると、大小の浅い「びらん」ができます。これはこの菌の(皮膚)剥離毒素によるものです。菌ですので、一般に抗生剤が有効ですが、抗生剤の効きが悪いことも多く(MRSAと呼ばれているものです)、薬の選択を誤ると難治性になることもあります。アトピーの児など、皮膚の弱い子は特に要注意です。急速に広がるびらん状の皮膚疾患をみたら、小児科か皮膚科で抗生剤などの内服および軟膏の処方を受けましょう。また小さい子にうつると、重症化しますので気をつけて下さい。罹患中、入浴はシャワーのみにしていただき、タオルなどの共有も避けて下さい。公共のプールへの参加は控えましょう。

  • 風疹(3日ばしか)

    風疹ウイルスにより発症する、比較的感染性の強い疾患で、一度かかると麻疹同様、ほぼ生涯免疫が得られます。成人と小児では重症度がかなり異なり、幼少児ではきわめて軽微に経過するのに対し、成人では麻疹と見まがうほど重症の経過をとります。2週間の潜伏期を経て、成人では40℃の熱・強い発疹・関節痛・頸部および耳介後部のリンパ節腫大が生じます。小児では軽い発疹が、成人では麻疹類似の、あとに色素沈着を残すほどの発疹となります(麻疹と鑑別が難しい)。咳・鼻水も成人ではひどく、咽頭発赤も著明です。ただし麻疹でみられるコプリック斑はありません。妊婦(特に妊娠初期に)が風疹に罹患しますと、胎児に心奇形・難聴・白内障・子宮内発育遅延などを生じます。保育園での流行時には、妊婦さんは要注意です。潜伏期(感染→発症までの期間)は約2週間です。2回目の風疹(またはMR)ワクチンをうてば、妊娠可能年齢をカバーできると思われますが、1歳時に1度うったままの人は、有効性は期待薄です。接触後のワクチン接種でも、接触後1〜2日以内に打てば発症を免れることができます。ただし妊婦への接種は禁忌です。

  • 麻疹(はしか)

    麻疹ウイルスにより発症する、極めて感染性・病原性の強い疾患で、未感染・未ワクチンの人が麻疹患者と1時間同席すると90%強で発症します。成人・小児問わず重症の経過をとる疾患で、39〜40℃の発熱が持続、肺炎を思わせる湿性の咳、大量の鼻水と目脂、咽頭痛があり、咽頭発赤も著明です。発疹が出るのは発熱後4病日頃からで、診断のつく前の最初の3日間に感染力が最も強いため、多くの医療機関にかかり、そこで周囲に感染を広げるたちの悪い疾患です。発疹出現前日に口腔内頬粘膜に生じる白斑(コプリック斑)が特徴的ですが、この斑の出現前の診断は、難しいかもしれません。肺炎・脳炎などで亡くなる方もあり、空気感染であることも手伝って、極めて感染力の強いのも問題です。このウイルスに対する特効薬はなく、潜伏期(感染→発症までの期間)は10〜11日です。ワクチンの有効性は極めて高く、1歳と6歳時に2回の定期接種を行います。現在成人の方々は、1回のワクチン後、追加接種されずに来ていますので、免疫力に乏しく、流行があれば罹る方が多いと思われます。

  • 溶連菌感染症(しょうこう熱)

    「溶連菌」の正式名は「溶血連鎖球菌」といい、咽頭炎や扁桃腺炎を引き起こす代表的な菌です。咽に溶連菌がつくと、扁桃腺腫大、咽頭痛、高熱、発疹、苺舌*などを引き起こすのが特徴で、症状なしで保菌している場合もあります。発疹は、赤インクを霧吹きで吹いたような非常に細かなものです。咽頭の抗原迅速キットですぐに診断ができます。抗生剤を飲むと症状がすぐになくなりますが、そこがくせもので、2〜3日で止めるとたちまち再発します。すぐに症状が軽快しても、最低10日間薬を飲むことが大切です。また、兄弟感染率が25%もあり、家庭内で蔓延しやすいので、兄弟間での抗生剤の予防投与も行われます。再発も多く、5回も6回も感染した児も稀ではありまあせん。合併症の多い病気で、腎炎・リウマチ熱・アレルギー性紫斑病に発展することもあります。発病3週間後に、腎炎(検尿)チェックをして終了となります。

    苺舌(イチゴじた)

    最初は舌の上に一面白い苔のようなもので覆われます。まもなく白い苔様のものは剥がれて赤剥け状態になります。その時の舌の状態が、イチゴのようにみえるので、苺舌と呼ばれます。苺舌は溶連菌以外では川崎病でもみられます。これら2つの病気は、回復期には手の皮が剥けることでも似ています。

咽頭及び呼吸器系の
感染性疾患

  • 咽頭結膜熱(アデノウイルス感染症、プール熱)

    咽にアデノウイルスがつくと、扁桃腺が腫れたり、白苔がついたり、咽頭痛、高熱、眼球充血、目やになどが現われるのが特徴で、別名「プール熱」ともいわれ、その熱は39℃が4〜5日続きます(プールに入らなくてもかかりますので、プール熱なる名前は誤解を招きやすいと思われます)。この疾患も迅速キットがあり、溶連菌同様に咽頭ぬぐい液で診断できますが、溶連菌と異なり抗生剤が無効で、特効薬もありません。高熱が続きますが、その割に元気で治り出すとスッキリ治ります。合併症もインフルエンザより少ない病気です。本疾患も学校伝染病指定ですので、治癒証明が必要です。潜伏期は1週間程度です。

  • 急性細気管支炎(RSウイルス感染症、毛細気管支炎)

    この疾患はあまり有名でないかもしれませんが、「RSウイルス」に感染しておこる疾患で、毎年秋から冬に流行し、乳児や低年齢の児の気道に強いダメージを与え、呼吸困難・咳・喘鳴などをきたす怖い病気です。大人にも罹るのですが、鼻風邪レベルで軽く済むため、軽んじられている傾向にあります。この病気は、未熟児で出生した児にかかると重症化することが多く、危険の高い子供たちには1人あたり何十万円もかけて予防策(シナジス:RSVの抗体の注射)がとられている程です。1歳未満の児が秋から冬に急にゼイゼイしてきたら、喘息と考えず、まずこの疾患を考えて小児科を受診して下さい。潜伏期は3〜5日で、高熱も数日間出るケースが多いです。インフルエンザ同様、鼻腔からの迅速キットで診断がつきますが、このウイルスに対する特定の治療薬もワクチンもありません。11月から3月までの冬季に保育園等で大流行をきたすので、小さい子の居る家庭では、冬場に警戒すべき最重要疾患(インフルエンザよりも)の1つです。またこの疾患は大量の分泌物をきたすために、それをベースに種々の細菌感染症を併発しやすく、細菌性の中耳炎や肺炎を高率に合併しますので、治りが悪い場合には中耳炎・肺炎などのチェックも必要となります。6ヶ月未満の赤ちゃんに罹ると、ゼコゼコするだけでなく、無呼吸発作(呼吸を止めてしまう発作)を起こす事もあります。この病気の主たる感染ルートは、接触感染です。すなわち「手」によって伝搬しますので、手洗いがとても重要になります。上の子が罹って、下の子が居る場合に、保護者はその点にご注意してケアして下さい。

  • ヒトメタニューモウイルス感染症

    このウイルスは比較的最近発見され、あまり認知されていない新座もののウイルスです。分類上はRSウイルスの親戚で、症状も高熱(3〜5日)・咳・鼻水・ゼイゼイなど、RSウイルス感染症の年長児版というような疾患です。肺炎等の診断で入院する例も10%程度あります。1〜5歳に多く、再感染も有ります。潜伏期は5日くらいで、6ヶ月未満の重症感染が少ないことがRSと最も異なる点です。RSと異なるもう一つは流行する季節で、この病気は3〜6月に流行します。診断キットが新しくできたので臨床現場で診断が可能ですが、RS同様、保険適応に難があるために行われているクリニックは少数です。RS同様に中耳炎の合併が半数近くに上り、その際には抗生剤も必要となります。このウイルスに対するワクチン及び特効薬はありません。

  • 百日咳

    百日咳は百日咳菌によってもたらされる特徴のある疾患です。普通の風邪のような咳ではじまり、2〜3週にわたってだんだん増加していきます。夜止まらないひどい咳発作、こんこんこんこんと持続する咳(スタッカートといいます)とそれに続くヒューーーーーという長い吸気音(レプリーゼといいます)が特徴で、熱もなく、ゼコゼコもあまりありません。血液検査ではCRPの上昇はなく、乳幼児では白血球増加(リンパ球増加)が特徴的ですが、成人や年長児では白血球増加が見られないことも多く、診断を難しくします。近年、成人の抗体価の低下に伴い、成人百日咳の流行が生じ、診断の難しさもあいまって密かに広がっている様です。4種混合ワクチンの中の1つとして能動免疫が得られますが、ワクチン接種後に罹る子もおり、うったからといって見逃されている場合もあります。マクロライド系抗生剤(エリスロマイシン、クラリスロマイシンなど)が有効ですが、ペニシリンやセファロスポリンは効きません。典型的な症状になってからでは、たとえ抗菌力のある抗菌剤を使用しても、咳込み発作はなかなか消失せず、延々と持続するのが特徴です。特に怖いのは、ワクチン未施行の6ヶ月前の乳児の罹患で、無呼吸発作や百日咳脳症、肺炎などを発症し重症化→入院するケースが多く見られます。感染力も強く、成人の間で、今後流行が持続することが予想されますので、乳児期早期のワクチン接種と成人患者の早期発見が重要となりましょう。家族中で「熱のでない長引く咳」があったら要チェックです。

  • ヘルパンギーナ

    一般に夏風邪と呼ばれているもののひとつで、暑い日が増えてくると増加します。コクサッキーウイルスが原因で、咽の口蓋垂(のどちんこ)のまわりにアフタ(口内炎)ができて、のどの痛みと高熱を生じます。のどの所見は特徴的で、見て診断がつきます。咳などは少なく、抗生剤も効きません。1〜3日で解熱しますが、本疾患には特効薬もワクチンもありません。合併症として、時にウイルス性(無菌性)髄膜炎を引き起こします。最近ヘルパンギーナと手足口病の合併例のようなケースをよく見かけますが、ウイルスは親戚同士なので、融合したりして、新種ができるのかもしれません。今後重症化しないか注意が必要です。

  • マイコプラズマ肺炎

    「マイコプラズマ」という微生物がひきおこす肺炎で、比較的元気はあり、熱と頑固な咳が特徴的な疾患です。レントゲンでは淡いホーキで掃いたような陰が見られます。通常使用されるペニシリン系抗生物質に抵抗性を示しますが、そのかわりにマクロライド(エリスロマイシン、クラリスロマイシンなど)やミノマイシンなどが有効です。この病気を疑ってレントゲンや血液検査をすれば、診断・治療が可能です。迅速キットもありますが、即日(直ぐに分かる)迅速キットは不確定のため、使用していません。肺炎といっても、肺炎球菌による大葉性肺炎などに比べれば軽症で、必ずしも入院の必要はありませんが、家族内感染率が高く、大人にも罹るため、家族内に一人出たら周りの人の二次感染に要注意です。少し前には、オリンピック年に流行すると言われましたが、最近はそのルールも当てはまりません。家族中で咳と熱があったら要チェックです。潜伏期は2週間です。

  • ライノウイルス感染症(鼻風邪)

    これは毎年春と秋(特に秋)に流行する、大流行しても取りざたされることがない日陰のウイルスです。普通の人には、文字通り(ライノは、鼻または鼻水の意)鼻風邪をきたすだけのウイルスですが、喘息持ちの人には大変厄介で、このウイルスにかかると喘息発作が誘発されたり、気道の過敏性が増強したりすることがよく見られます。季節(秋)で発作が増えるのに加え、こんな隠れたウイルスも喘息児に悪さしています。

胃腸系の感染性疾患

  • カンピロバクター(キャンピロバクター)腸炎

    細菌性腸炎のひとつで、「カンピロバクター菌」が口から入って感染します。その菌がお腹の中で増殖し、症状(下痢・発熱・嘔吐・血便)として現れます。火が完全に通っていない鶏肉や豚肉が原因で、集団食中毒の原因にもなります。ホスミシン®などいくつかの抗生剤が有効です。一般に合併症は少なく、重症に至ることはまれですが、中には入院を要するケースもあります。食品にしっかり火を通すことだけでなく、生肉等を切った後の包丁やまな板を介して感染することもありますので、調理具の洗浄などにも気を配って下さい。
    カンピロバクター菌は細菌性腸炎で最も多く見られるものですが、その他の細菌性腸炎には、サルモネラ菌や病原性大腸菌など、より重い病気の場合もあります。いずれも夏季に多くみられますが、季節を問わず、強い腹痛や血便の際は早期の来院をお考え下さい。

  • 乳児冬季下痢症(ロタウイルス胃腸炎)

    「流行性嘔吐下痢症」の1疾患で、毎年3月にピークとなるのがこの病気です。ロタウイルスが口から入ることで感染します。この疾患は「乳児白色便性下痢症」「仮性コレラ」ともいわれる病気で、それらの名前から分かるように、乳児が冬季に罹る病気で、白色便をきたす事が多く、コレラ様の水様下痢を伴う激しい疾患です。嘔吐が先に出現し、その後下痢が続きますが、嘔吐の回数も下痢の回数も1日10回を超えて来ますとさすがに自宅管理は難しく、脱水を治療する目的で、点滴・入院となることがあります。ロタウイルス性胃腸炎は小さい子に多い病気ですが、時に小中学生や成人が罹ることもあり、最近はそういうケースが目立つようになってきました。ロタワクチンが有効ですが、使用できるのは生後6ヶ月未満の乳児のみです(有料)。

  • 病原性大腸菌(腸管出血性大腸菌、O-157)

    大腸菌というのは、もともと人の腸管(特に大腸)の中に多く生息し、人(ほ乳類)と共存してきた菌ですが、その中に病原性のあるものが発見されました。その最も有名な菌が、O-157を初めとする腸管出血性大腸菌です。この菌の特徴は、菌体内にヴェロ毒素を含み、その毒素により、腸管出血や腹痛を来すだけでなく、脳症や溶血性尿毒症症候群などの命に関わる合併症を引き起こし、死に至ることもある怖い菌です。脳症は、意識混濁・痙攣などの症状をきたし、溶血性尿毒症症候群は、溶血性貧血・腎不全・血尿・血小板減少などを生じ、緊急透析や血液濾過を必要とする厄介な病態です。この菌は基本的にはウシの内臓に由来し、少量の菌量でも発症するため、食してから発病までの期間が1週間を越えることもあり、原因の特定が困難な食中毒としても有名です。井戸水からの集団報告もあり、必ずしも食物とも限りません。ヴェロ毒素を持つものは、O-157が圧倒的に多いですが、O-26、O-111などいくつかの菌種からもヴェロ毒素の報告があります。逆に、病原性大腸菌といわれても、ヴェロ毒素が発生しないものは、病原性に乏しいようです。

  • 流行性嘔吐下痢症(ウイルス性胃腸炎)

    冬季に集中し、いくつかのウイルスが原因となります。毎年12月頃に小児・成人と問わずにかかるのが「ノロウイルス感染」で、ロタに比べれば軽症で、一般的には数回の嘔吐と下痢が2〜3日続く程度で軽快します。家族中で罹ることも多いです。インフルエンザの後を追って、毎年3月にピークとなるのが重いロタウイルス感染です。ロタウイルスは小さい子に多い病気ですが、時に小中学生や成人が罹ることもあり、最近はそういうケースが目立つようになってきました。ついで多いのは、アデノウイルス胃腸炎です。アデノによる下痢は長く続くことが多く、季節性もありません。これらのウイルスは、どれも抗生剤が効かず、特効薬もありません。ロタウイルスにはワクチンが出来ましたが、ノロとアデノウイルスにはワクチンもありません。
    嘔吐が止まらない場合には、点滴が必要なので診察を受けて下さい。下痢だけの場合には、OS-1®などの水分補給と、お粥(是非塩を入れて下さい)などのデンプン類中心の食事を少しずつ与えて、納まり具合を見て下さい。尿の回数も脱水の判定基準になります。またこの病気は接触感染です。すなわち「手」によって伝搬しますので、手洗いがとても重要です。特に家事をされる方は食事を作る前に丁寧な手荒いを行って下さい。

インフルエンザと
その他の感染性疾患

  • インフルエンザ

    毎年冬になるとニュースを騒がせるのがインフルエンザです。別名「流行性感冒」といって、大人も子供もそろって罹るから大流行を巻き起こすのです。小中学生が罹患の中心と思ってみえる方が多いかもしれませんが、1〜5歳の幼児が最も罹患率が高いです。1〜5歳は後で述べるインフルエンザ脳症が起きやすい時期でもあり、重要です。また頻度は多くありませんが、お年寄りに罹ると免疫力を低下させ、二次性肺炎をおこし不幸な転帰をとることもあります。
    診断は迅速キットでできますが、熱の出た当日では陰性を示すことも多く、「お鼻つんつん」検査が子供たちに不評で小児科嫌いを作りそうなのが欠点です。また検査試薬と並んで、インフルエンザ特効薬も出そろい、「きちっと診断・治療」がインフルエンザ治療の基本になっています。治療薬には、タミフル(内服)とリレンザ(吸入)、イナビル(吸入)とラピアクタ(点滴)の4種類があります。後2者は1回の治療で終了となるのが特長です。どの薬もA型・B型両方に有効ですが、最近タミフル耐性株が問題になっています。またタミフルは飛び出し事故など突発行動や、幻視幻聴・情動異常等の原因としても問題になっており(現段階では白の判断)、10〜20歳での使用が制限されているため、その年代での治療はリレンザまたはイナビルが中心となります。もちろん本人にも治す力がありますので、1週間もすれば自然に軽快・解熱しますが、それ以上の長期にわたる場合は、肺炎など細菌による二次感染を考えるべきです。ひと冬にA型とB型の両方のインフルエンザに罹患するケースもありますので、「済んだ」と思って安心するのは危険です。毎年数人の子供さんが両方の型に罹患します。学校指定の伝染病ですので、しっかり治してから(解熱後48時間以上経過していること)学校に行きましょう。解熱後すぐでは、まだのどにウイルスが存在します。うつされない対策ばかりでなく、人にうつさないエチケットにも配慮しましょう。

  • インフルエンザ脳症と
    解熱剤について

    脳症はインフルエンザ感染に加え、特定の解熱剤(具体的にはボルタレン・ポンタール・アスピリン・バッファリン®など)を使用した幼少児に多くみられます(大人はなりません)。多いといっても何十万人に一人が罹る病気ですから、確率が高いわけではありませんが、その半数が亡くなり、生存してもそのほとんどが後遺症を残す怖い病気です。解熱剤を使わない子供からも発生しており、解熱剤ばかりが悪役という訳ではありませんが、我々小児科医は小児への(インフルエンザ流行期の)発熱に対する解熱剤使用に際し、特に配慮しています。インフルエンザの熱に対して最も安全性が高いといわれている「アセトアミノフェン」(商品名:アンヒバ座薬・アルピニ座薬・ピリナジン散・カロナール®シロップ/錠など)をこの時期のお子様に対する解熱剤として処方しています。

  • おたふく風邪(流行性耳下腺炎)

    耳下腺および顎下腺(がっかせん)が腫れる病気で、その腫れた風貌から「おたふく風邪」と言われています。ムンプスウイルスが原因で、うつってから発病まで2〜3週間かかります。合併症に、無菌性髄膜炎・膵臓炎・難聴などがあり、思春期以降では睾丸炎(精巣炎)・卵巣炎なども多くみられます。無菌性髄膜炎はこの中でも頻度が高く、注意が必要です。2歳未満はおたふく風邪に比較的罹りにくく、罹っても無症状に経過する人もいるようです。ワクチン(有料)がありますので、男女問わずにうっておいたほうがいいでしょう。兄弟がかかってからのワクチン接種では予防できないと言われていますので、ご注意下さい。

  • 無菌性髄膜炎(ウイルス性髄膜炎)

    夏風邪ウイルス(コクサッキー・エコー・エンテロウイルス)やムンプスウイルス(おたふく風邪)に合併して発症します。38〜40℃の高熱・我慢できないほどの頭痛・突然の頻回嘔吐が生じ、頸が前屈できなくなります。上記ウイルスが脳のまわりの髄液に入り込んでおきる症状です。治療しなくても、数日の重い症状を乗り越えれば、その後は自然軽快し、快方に向かいますが、上記症状が揃っている場合には、検査が必要ですし、入院治療が望ましいと思われます。また、微熱・頭痛がある時には、炎天下での運動・プールなどは髄膜炎発症の原因になりますので、避けて涼しいところで安静にしてお過ごし下さい。なお、類似の病名で「化膿性髄膜炎」または「細菌性髄膜炎」というものがあり、こちらは治療が遅れると、死亡したり重大な後遺症を残す可能性のある怖い疾患です。この疾患との区別も、一般の方では難しいと思われますので、高熱・強い頭痛・頻回嘔吐のいずれかの症状が有るときは、早期に受診しましょう。

  • 流行性角結膜炎(アデノウイルス感染症、はやり目)

    目にアデノウイルスがつくと、眼球充血、目やになどが現われるのが特徴で、プール熱と同じ種類のウイルスですが、型の違いで症状が異なります。重症感はありませんが、流行の速度が早いので注意が必要です。接触感染でうつりますので、タオルなどは分け、手を目に持っていかないように心がける必要があります。

アレルギー性疾患・
川崎病

  • アトピー性皮膚炎

    皮膚にあらわれるアレルギー性の慢性炎症の総称で、乳児から成人まで広く見られますが、こと乳児期には多くの方が罹ります。乳児期に多い原因は食物アレルギーで、日本では特にその中でも鶏卵に反応を示す乳児が多いようです。直接原因食品を摂取しなくとも、母乳に含まれる微量の成分で感作される事も多い様です。2歳過ぎると、食物アレルギーが原因である事が減り、代わってダニなど、喘息と共通の抗原が問題となります。体内への侵入ルートも経口(食物性)から接触性へと変化して来ます。その間に軽快する児と悪化する児が見られます。重症例では難治性で、ステロイドの使用も余儀無くされるケースもみられます。

  • 花粉症

    日本の花粉で最も有名なのは杉花粉です。杉花粉の飛散は2月末より増加し、4月上旬まで続きます。ピークは3月上旬です。ただ、杉花粉症の方はヒノキの花粉にも交叉免疫があるといわれ、ヒノキ花粉は5月上旬まで続きますので、長期の内服が必要です。アレルギー性鼻炎&結膜炎(鼻水・くしゃみ・鼻閉・目の痒み・充血)が主な症状ですが、人によっては、咳(喘息発作)を誘発したり、顔に湿疹が出現する人もいます。女児では、最飛散期に陰部の痒みを訴えることもあります。今や日本人の2人に1人は花粉症で、国民病といわれるまでに増加しましたが、それは明治以後の国策としての杉・ヒノキの植樹が原因で、適齢期(?)を迎えた杉たちが多くの花粉をたくさん飛ばしているからです。
    花粉症を来年悪化させないためにも、内服薬に頼るよりも、「花粉浴」を防ぐことが大切です。窓を開けない、干物を外に干さない、マスク・眼鏡・ゴーグル・帽子を使用する、帰宅時に玄関で脱衣するなど、徹底するよう努めましょう。
    最近、シダトレン®という舌下免疫療法(体質改善薬)が開発され、使用可能となりましたが、年を通じて内服する必要があります。中学生以上が適応となりますが、毎年ひどい花粉症でお悩みの方は、年末までにご相談下さい(飛散期からの開始はできません)。

  • 気管支喘息発作

    気管支喘息発作は秋(9月中旬〜11月中旬)に最も多く、次いで春先と梅雨時にも増加します。気温や気圧の変化が目まぐるしく変化している時期に、発作が起きやすくなります。起きやすいシーズンには気を引き締めて、薬の飲み忘れなどないようにして下さい。喘鳴時や咳が増強した場合には、運動などを止めることも大切です。ホコリや煙、冷たい空気などでも発作を誘発しやすいので気をつけて下さい。マスクなどを利用するのもいいでしょう。

  • 川崎病

    原因不明の全身の血管炎(正確には動脈炎)で、溶連菌を初めとする様々な感染症が引き金となって発症する疾患です。生後6ヶ月〜5歳に多く、持続する高熱、眼球の充血(目やには出ない)、口唇の発赤&出血、苺舌、頸部リンパ腺の腫大、不定形発疹、手足の発赤&浮腫、2歳未満ではBCG部位の発赤もよく見られます。抗生剤を飲んでも解熱せず、不機嫌度が強く、血液検査では白血球やCRPが増加し、肝酵素の上昇もよく見られます。問題は合併症で、冠動脈(心臓の筋肉に栄養を送る血管)の拡大と動脈瘤の出現、ひいては狭心症や心筋梗塞などが数%に発生します。その予防のために、アスピリンの内服や、γグロブリンの点滴などを行います。冠動脈に変化がないかをエコー検査で観察していくことが重要となります。なお、γグロブリンの点滴を行った児は数ヶ月の間、生ワクチンがうてませんのでご注意下さい(不活化ワクチンはかまいません)。

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